【知れば得する純米酒の選び方】新酒・古酒・熟成古酒の違いとその魅力

米と酒と花

純米酒には新酒(しんしゅ)と古酒(こしゅ)、熟成古酒(じゅくせいこしゅ)があります。

新酒古酒熟成古酒にはどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、新酒と古酒、熟成古酒の違いを製造年月酒造年度で解説します。

新酒と古酒、熟成古酒の違い

新酒と古酒、熟成古酒の違いは、製造年月と酒造年度の関係で説明できます。

新酒:製造年月が酒造年度内の日本酒
古酒:製造年月が酒造年度以降の日本酒
熟成古酒:3年以上熟成させた日本酒

ここでは、「製造年月」「酒造年度」という言葉が使われています。

それぞれ詳しく説明します。

製造年月とは

製造年月は、造られた日本酒を出荷するために瓶詰めした時期を示しています。

日本酒は、「販売する目的をもって容器に充てんし密封した時期」を製造時期として表示するように決められています。(国税庁:清酒の製法品質表示基準より)

賞味期限は記載義務なし

ビールには「製造年月」の他に「賞味期限」が記されていますが、日本酒には「賞味期限」は記されていません。

日本酒はアルコール度数が高く腐敗しにくいので、賞味期限の記載義務がないからです。

酒造年度とは

酒造年度(しゅぞうねんど)は醸造年度(じょうぞうねんど)ともいわれ、日本酒が造られた年度を表しています。

ただし、この酒造年度は一般的な年度とは期間が違います。日本では一般的に年度といえば「41日~翌年331」のことですが、酒造りの年度である酒造年度は「71日~翌年630」です。

1965(昭和40)年の国税庁の通達により、日本酒の原料となる米の割り当てをすることを目的に、酒造年度は7月1日に始まり6月30日に終わると決められました。

酒造年度を表す記号

日本酒が造られた年度を表す酒造年度は、数字とアルファベットを使って示されています。

ラベルに「R1BY」などの記号を見つけることがありますが、これが酒造年度を示しています。

下の特別純米酒「町田酒造55」は、裏ラベルの記載内容から古酒だということがわかります。

「R1BY」の『BY』は英語”Brewery Year”の頭文字で、「醸造した年」という意味です。

「R1BY」の『R1』は「令和1年度」という意味です。

「R1BY」は、単に「1BY」と書くこともあります。西暦で表した場合は「2019BY」となります。

「R1BY」は令和1年の酒造年度に造られたという意味ですが、ここで注意が必要です。

酒造年度令和1年は、2019(令和1)年7月1日~2020(令和2)年6月30日の期間です。「R1BY」の前半は令和1年ですが、後半は令和2年となります。

上の写真の特別純米酒「町田酒造55」は、酒造年度が「R1BY」、製造年月が「2020年7月」です。

したがって、2019(令和1)年7月~2020(令和2)年6月の期間に造られ、2020(令和2)年7月に瓶詰めされたということがわかります。

造られた酒造年度の次の年度に瓶詰めされたものなので、新酒・古酒の分類でいえば古酒になります。

古酒の例

会津中将(あいずちゅうじょう) 純米吟醸 夢の香[福島県]
・原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)
・精米歩合:55%
・アルコール度数:15度

酒造年度は「30BY」平成30年度、つまり、2018(H30).7~2019(R1).6に造られました。

製造年月は2020(R2)年5月なので、少なくとも11ヶ月間は熟成された古酒になります。

よく熟成された純米吟醸酒で、まろやかな甘味と豊かな香りが素晴らしく、いつまでも飲んでいたい古酒です。

完熟させた古酒の例

鶴齢(かくれい) 特別純米 五百万石 完熟[新潟県]
・原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)
・精米歩合:55%
・アルコール度数:17度

一升瓶の肩ラベルには「令和元年度醸造 完熟 1BY」と書いてあります。

裏ラベルを見ると、製造年月201912雪室熟成蔵出年月202010の表示があります。

2019年12月に瓶詰めをしてから10ヶ月間『鶴齢の雪室』で貯蔵熟成させ、2020年10月に出荷した特別純米酒です。

『完熟』と書かれた札がかかっていました↓

特別純米酒ですが精米歩合55%は吟醸酒と同等、しっかりと米の味を感じる純米酒の良さが全面にでています。

角が取れていてどこまでも透明感があり、10ヶ月の熟成の成果を感じられる素晴らしい味に仕上がっています。

このように、瓶に詰められた状態で熟成させた古酒もあります。

熟成古酒

お酒を造り始めた酒造年度以降に出荷されたものは古酒になりますが、「町田酒造55」のようにR1BY(令和1年度醸造)で製造年月が令和2年7月のものは、ほとんど新酒と変わりありません。

冬に造られ秋に出荷されるひやおろしや秋あがりは、厳密には古酒に分類されますが、例外的に新酒として扱われています。

このように、新酒と古酒は明確に区別されていないようです。

しかし、熟成古酒は明らかに古酒とは違います。

一般的に古酒というと、「造られてから何年も経った古いお酒」というイメージがわくと思いますが、そのような日本酒は熟成古酒と呼ばれています。法的な決まりはありませんが、長期熟成酒研究会では熟成古酒を次のように定めて古酒と区別しています。

長期熟成酒研究会では、「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を熟成古酒と定義しています。

長期熟成酒研究会HPより引用

熟成古酒は、年を重ねるにつれ色が変化し味わいも深まります。

色はイメージです

深い味わいをもつ熟成古酒には熱烈なファンがいます。

まとめ

新酒と古酒の違いを製造年月と酒造年度で説明してきましたが、古酒であっても製造年月が酒造年度に近い場合は味の違いはほとんどありません。

近年、新酒の人気が高まっていますが、完熟した古酒には新酒にはないまろやかな味わいがあります。

また、熟成古酒は色味や香りが深く、飲んだ後の余韻をゆっくり楽しめます。

【純米酒の選び方】失敗しないための3視点+知っておきたい7知識 では、純米酒選びで失敗しないために必要な3つの視点、美味しい純米酒を選ぶために知っておきたい7つの知識をまとめているので、様々なタイプの純米酒を楽しんでいただくために、ぜひご活用ください。

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